展覧会の絵の中に描き入れる特別なもの
少し前から、展覧会の絵について考えるだけで、絵の材料となる線や色がとめどなく溢れてきそうな感覚があります。
そうすると、自分のこの手から一体どんな作品が出てくるのか、ゾクゾクするくらい楽しみで、早く描きたかった。
展覧会では今まで経験したことのない大きな絵を描く予定ですが、今はまだその四分の一程のスペースに、下書きをしているところです。
まず最初は命の誕生の瞬間、性交渉を象徴するシーンを描きました。
そしてこの後、中学生の頃に描いた大切にしている絵があるのですが、それを一部に描き加えていこうとしているところです。
思春期の私は複雑な思いをいつも抱えていました。
思春期は誰もがそういう時期だと言えば、そうなのですが。
その絵を見ると、その頃の辛い思いが生々しく伝わってきて苦しくなるので、目につかない所に保管していました。
そしたら、どこにしまっておいたか分からなくなり、展覧会の絵のために最近やっと探し出したところです。
HPのギャラリーに載せていないように、ここで公開してしまうことは、苦しかった過去を人目にさらすような気がして恥ずかしく、かなり抵抗がありました。
でも展覧会の絵の中に描き入れるなら、どちらにしろ人に見られることには変わりないのかなと思い、勇気を出して今日のブログに載せることにしました。
いつも見せている絵とは大分雰囲気が異なる怖い絵ですが、思春期以降こんな絵を描くことは珍しくありませんでした。
家族にも誰にも見られたくないし自分で見返すのも嫌で、描いた直後にすぐ捨ててしまったり、いくつかとっておいた物も社会人になって引っ越す時に、一枚を除いて全て捨ててしまいました。
その、唯一残してみた一枚が、この絵です。
実はこれ、中学校の美術の定期試験で描いた絵。
試験問題は、「次の中から、好きなテーマを選んで絵を描きなさい。」というようなもので、たった数行の問題用紙と画用紙一枚だけが配られました。
テーマは確か、「幸福」、「喜び」、「悲しみ」、「混乱」という感じで、5つくらい選択肢があったと思います。
その中で、私は迷わず今の心境に当てはまる「混乱」を選び、45分程の時間制限の中、思い切り自分の内面を画用紙にぶつけました。
無心で描き、終了のチャイムが鳴ったところでピッタリ描き終え、冷静になって見てみると、自分でもとても恐ろしい絵だと思ったのを覚えています。
チラチラッとみんなが描いた絵を覗き見すると、私の絵だけ全然人のと違う。
変わった絵を描いてしまった。
私は変な人かもしれない。
それが恥ずかしくて、返却された直後、友達に見られないよう慌てて片付けたのですが。
でも、好きな美術の先生から手渡される途中で見た、右下の赤ペンで書かれた「A◎」という最高評価と、「ちょうーたいへんよい」というコメント。
一人静かに興奮しました。
今のありのままの自分を認めてもらえた気がして、とっても嬉しかったのです。
そんなこんなで、これだけは大切な一枚になりました。
当時は、(詳細は今は控えますが)辛い気持ちがあってもそれを誰にも出すことなく、いつも笑顔で明るく振る舞っていました。
当時の友人達も未だに、それが本当は努力して作っていた笑顔だとは、知らないんじゃないかと思います。
でもだからこそ、余計に辛かった。
怖い絵だけど、思春期の頃の自分の内面が生々しく映し出された唯一の絵。
あの頃、頑張って生き抜いた証として、これからも自分で大切にとっておくつもりです。
それでは今からこの絵を、大人になった私がもう一度、魂込めて、穏やかに、描いていきます。

〈 1/6 本日のミニアート 〉
タイトル:中学の美術の定期試験 テーマ「混乱」